高校生ビジネスプラン・グランプリ”への「応募」を目指します…いえ、海藻をテーマに「グランプリ」を狙います
一般社団法人 海藻文化振興会は、海藻に対する学びを深め、未来の海を創造する人材の育成に向けて「はこだて海藻アカデミー」プログラムを連続的に開催しています。この取り組みの一環として2025年6月15日(日)、高校生を対象としたイベント「海藻ビジネスプラン企画セミナー」を開催しました。今回は、函館高専や奥尻高校、さらに札幌の立命館慶祥高校から対面とオンライン合わせて21名が参加する中、専門家からの基調講演や企画ポイントなどを解説していただきました。また、海藻を用いた新しいビジネスプランをグループに分かれて話し合い、今後の企画提案の方向性や内容などを発表しました。このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
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海と日本PROJECT「はこだて海藻アカデミー 海藻ビジネスプラン企画セミナー」開催概要
・日程/2025年6月15日(日)
・開催場所/函館市大森町「サンリフレ函館」2階視聴覚室
・参加人数/高校生21名(含むオンライン参加)ほか関係者・報道機関含め計30名
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【開会(事務局からの概要説明)】
開会にあたり、事務局からセミナーの今後のスケジュールなどを説明しました。
・皆さんには海藻をテーマとしたビジネスプランを企画していただきます
・漁業を取り巻く環境は担い手不足など厳しさを増しているので、できればその解決につながるプランを
・9月24日の応募締切を経て11月下旬にはファイナリスト10組が決まります
・来年1月11日開催の最終審査会(東京)でのグランプリ受賞を目指しましょう
・7月26日に大阪・関西万博の会場でビジネスプランのプレゼン体験をしていただく機会も設けました
・その参加者は選考となりますが、選ばれた方は滅多にない機会ですから存分に力を発揮してください
・このほか、企画した「商品の試作」やその「テスト販売」、また「発表会」なども考えています
【基調講演「海藻資源、その重要性と可能性について」】
北海道大学名誉教授・北海道文教大学大学院健康栄養科学研究科長 宮下和夫教授
宮下先生から、海藻など藻類のエネルギー資源としての活用や生物資源としての重要性、またダイエットや様々な健康リスクを低減させる「スーパーフード」としての注目度の高まりなどについて、詳しくお話をいただきました。牛のゲップに含まれるメタンガス(温室効果ガス)が環境面での大きな懸念となっているというお話の中で、「飼料にわかめの未利用資源『仮根(かりね)』の発酵液を加えるとメタンの生成割合が激減する」という最新の研究事例を教えていただき、海藻の潜在力にはあらためて驚かされました。結びに、宮下先生からは「研究計画を立てても99%はその通りにならない。しかし、それを失敗だと思わず、そこから新たな発見を見出すのが大切なこと」、「みなさんもぜひ、海藻を全く違う角度から活用するアイディアを考えることにチャレンジしてみてください」という、深くて素敵なお言葉をいただきました。
【参加者からの質問タイム】
(Q:近年、昆布の収穫量が減っていると言われる中、それを増やす取り組みを教えてください)
宮下先生:今まで天然昆布が生えていたところに今は生えてこないという状況が続いています。磯焼けなどの要因は地球温暖化?と言われるなか、海外では変化した環境に適合した海藻を大規模に養殖する技術が発達し、盛んに取り組まれています。日本でも、養殖の大規模実施を行うことで、現場作業の効率化や生産性向上に繋がると想います。
(Q:採れない昆布。将来的にその転換を考えるとき、わかめの可能性はどうでしょうか?)
宮下先生:わかめもいいですが、こと昆布のことを考えると、現在の昆布養殖はロープ式が主力ですが、海外では昆布を海底から上方向へと「花のように」拡げて生長させる養殖が行われています。これはウニによる食害の影響も少なく多くの収穫が可能となります。ただ、個人でそれを行うには負担が大きい。
だから多くの人々の手による共同運営などを考えていくことも必要だと思います。(この後、休憩の間も宮下先生への個別質問は続いたのでありました↓皆さんとても熱心です!)
【ビジネスプラン作成のポイント】
日本政策金融公庫国⺠⽣活事業本部 北海道創業支援センター 南 宗成 所長
南所長からは、今回のセミナー参加者が高校生ビジネスプラン・グランプリに臨むにあたってのポイントや留意点など「上位入賞に向けた」実践的なお話をいただきました。そもそも「ビジネスって何?」という最も重要で、かつ根幹的な部分の解説から講話はスタートしましたが、それは「世の中にある様々な課題を解決するのがビジネス」だと…南所長からはその核心を明解に教えていただきました。続いて、昨年グランプリを獲得した宮城県農業高校の最終審査プレゼンを動画でご紹介いただきましたが、わかりやすく説得力のあるその提案には驚きました。参加者の皆さんも大いに触発されたのではないでしょうか。また、南所長からは、ビジネスプラン作成のポイントを「商品・サービス」、「ターゲット」、「必要な経営資源」、「収支計画」の視点から具体的に説明いただきましたが、「この4項目の『説得力』を各々高めていくことが重要」だということ、さらにビジネスプランのレベルアップには「いろいろな人にプランを聞いてもらい、そこから様々な『気づき』を得ることが重要」だということを教えていただきました(参加者の皆さんが今後、人生設計を考える場面などでも大いに参考となるお話でしたね)。
【休憩・恒例の…昆布製品試食&ねばねば体験タイム】
今回も4つの昆布(ガゴメ昆布、ホソメ昆布、真昆布、春どり昆布)を食べ比べて、それぞれ大きく異なる旨味や特長を体感。試食テーブルの周りには「こんなに味が違うの」、「これ、しょっぱい!!」といった驚きの声が広がっていました。また、「ガゴメ昆布」入りの容器に手を入れて、その想定外のネバネバ感を実体験し「これ、ねばりすぎw」、「エステに使えないかな」という声も。
【グループ毎にビジネスプランを考察】
休憩後に、提案の方向性などをもとに参加者をグループ分けし、それぞれビジネスプランのテーマなどについて、時間をかけて討議しました。あらかじめ考えていたビジネスプランを宮下先生と南所長に力強くプレゼンし、あわせて課題の解決方向などを積極的に質問する参加者(その熱意に感心しました)。熱意には熱意で…真剣にお応えいただいたお二方の姿にも感動しました。今後の提案に向けて、大いなる「気づき」が得られましたね。
【グループ毎にビジネスプランのテーマなどを発表】
リモート参加の奥尻高校も含め、5つのグループから次のとおり発表がありました。
①昆布を用いたコンブテラピーの普及を考えたい。ターゲットはクルーズ船で函館に来る外国人観光客。エステを通じて昆布を知ってもらう。また、コンブテラピーの普及を通じて昆布の消費量を増やし、昆布生産者の収入増を促すことで、将来にむけた良い循環を創出したい
②「昆布水」を商品化しスポーツドリンクとして販売する、水槽の中に「いけ花」ならぬ「いけ昆布)」をする体験メニューを創出する、昆布を守るためウニの研究(ウニが好む成分・好まない成分を研究すること)を進める。この3つのビジネスプラン化を考えたい
③子どもが入浴を楽しめるよう、スライム風の入浴剤を作りたい。あわせて浴室の内壁に貼れる「昆布ボード」をつくり、道内に様々ある昆布とその生産地の知識を子どもの頃から知ってもらえる方法を考えたい
④昆布養殖に伴う廃棄物「ガニアシ(仮根部分)」を活用したブロックを製造し、海藻を育てたい
⑤ホソメ昆布のブランド化と、ウニの廃棄物(ウニ殻)の活用策を考えたい